装丁解剖・四冊目 『養老訓』

著者:養老孟司 出版社:新潮社 装丁:南伸坊

◎カバー
用紙:里紙・白 四六判Y目135kg
インク:顔料箔・赤(P-7-70=田中孝商店)+DIC582(墨)
加工:マットニス
◎表紙
用紙:里紙・雪 四六判Y目100kg
インク:プロセスK
◎見返し
用紙:里紙・うす鼠 四六判Y目130kg
◎帯
用紙:コート紙 四六判Y目100kg~130kg
インク:DIC 80(オレンジ)+DIC582(墨)
◎別丁扉
用紙:里紙・白 四六判Y目100kg~130kg
インク:DIC 80(オレンジ)
◎栞・花布
栞:31(伊藤信男商店)
花布:23(伊藤信男商店)
◎本文
用紙:オペラクリームウルトラ 四六判Y目80kg
インク:プロセスK

発行年は2007年、新しい本ではありません。出版社は新潮社ですがデザインは装丁室ではなく南伸坊氏。
デザインそのものは、良く言えば渋く、悪く言えば地味。(下記画像参照) 使う紙も特に新しいものでもなく、仕様的に特に変わった事もしておりません。

養老訓の画像

しかし、良いです。彼の装丁すべてに共通する独特の品があり、自分のハンコを押すようなデザイン臭さもなく、甘くは無いけれども冷たい感じもせず(書体の選択と級数に理由があると推測)ユーモアがあり、内容とも合っている。

自分が装丁の仕事をしているとよくわかるのですが、
こういうデザインをするには、とても強さが必要です。

ちなみに、彼は自身の本でこのように述べています
『デザイン的な野心というのはあまりない。つまり「画期的なデザイン」とか、「個性的」で「大胆な」「ユニークで」「斬新な」デザインがしたいわけじゃないのだ。もっとも、そんなこと、できないというだけかもしれないが。
 そういうリッパなことじゃなくて、ちょっとへんなこと、ちょっとオチャメなこと、ちょっと笑えるようなこと、になっているのをつくりたい。
 まぁ、ちょっと偏屈な、おだてりゃ図に乗って夢中になるが、あれこれ注文つけると、だんだんムッツリしてくるっていうコマッタ職人……が私である。』
(「装丁/南伸坊」フレーベル館・2001年初版)

◎本の内容について
帯には「上機嫌に生きるための道しるべ」と書いてある「バカの壁」の養老先生のエッセイです。読者対象は主に老人、あるいはこれから老人になろうとする世代
かと思いますが、考えてみれば誰でも老人にはなるわけですから、いまの自分(30代)が読んでもつまらないという事はありません。
「こうすれば成功する!」というようなアグレッシブな本を読みたい時にはまったく向きませんが「含蓄のあるおじいちゃんの話をしみじみ聞きたいなぁ」と思う時に手に取ると、とてもよいと思います。
個人的にはこの本の最後に書いてあった河合隼雄さんについての数行を読んだ時点で「ああこれは良い本だ」という結論に至りました。