装丁解剖・三冊目

『天才! 成功する人々の法則』
著者:マルコム・グラッドウェル 出版社:講談社 装丁:石間淳
◎カバー
用紙:モダンテキスト 四六判Y目81.5kg
インク:DIC582(墨)+DIC103(紫)+DIC2055(薄黄色)
加工:グロスPP
◎表紙
用紙:OKサンドカラー・ホワイト 四六判Y目120kg
インク:プロセスK
◎見返し
用紙:アングルカラー・はいじろ 四六判Y目130kg
◎帯
用紙:コート紙 四六判Y目100kg~130kg
インク:プロセス4C+DIC103(紫)
加工:グロスPP
◎別丁扉
用紙:TS-1・N-9 四六判Y目130kg
◎帯
用紙:標準コート 四六判Y目100~130kg
インク:プロセス4C+DIC103(紫)
帯加工:グロスPP
◎本文
用紙:OKシュークリーム 四六判Y目72.5kg
インク:プロセスK
◎花布:115(伊藤信男商店)
◎栞:12(伊藤信男商店)
カバー用紙、質感的には「ミセスB」でもほとんど同じだと感じたのですが、全体を覆うクリーム色は「モダンテキスト」の方が近い(そして紙としてこちらの方が面白い)と思ったので最終的にこちらを選択しました。斤量がカバー用紙としてはちょっと物足りないので、汚れを防ぐためだけではなく、紙の強度も上げる意味でもグロスPPは好都合です。
カバーインクは、どの色もアミ点がなかったので、欧文の紫とイラストの中に敷いた薄い黄色は特色のベタ刷り。
面白かったのは、線画イラストの下にだけ特色の紫もベタ刷りしていること。
墨の下に色を敷くのは、墨を濃く見せるためにする基本的な技術ですが「塗った部分がより強調される」という理屈で言えば、飾りである絵よりも、タイトルや著者名・訳者名を強くアピールするべきだと思うのですが、なぜこういう結論になったのでしょうか?
推測でしかないですが、自分は「入稿時はイラストだけではなくタイトル・著者名などの下にも紫を敷いたのだが、色校で版ズレが目立ったので(特に著者・訳者名)文字部分の地色はすべて抜いた」のではないかと思いました。
色でもう一つ不思議なのは、カバーに刷った紫のフチに薄ピンクのぼかしが付いていることですが、 同じ色を刷った帯の紫にはピンクのぼかしがない事を考えると、これは意図的なものではなく、ひょっとしたら紙に対する特色の「にじみ」なのではないでしょうか?(しかし、この手の紙でそんな話は聞いた事ありません…)
そして今回一番自信が無いのが……見返し用紙。「アンドレ」「ゲインズボロー」そして特に「新草木染・ハーブ」と非常に良く似ているのですが、横に入った大きめなストライプから考えると「アングルカラー」だと思います。しかし、この本に使われている微妙に青みがかった色は見本帳には見当たらないのです。自分の選んだ「はいじろ」をもう一つ濃くした「しろがね」という色もあるのですが、そちらの方はあきらかに「毛」が多すぎる(この紙は、紙の中に細かい糸くずを混ぜ込んだようなテクスチャーを持つ紙なのです)
この紙は、青山見本帳や王子ペーパーギャラリーに行った際に調べてみるつもりです。
本文用紙は、ページ数の割には束幅を絞れるOKシュークリーム、OKライトクリーム・四六判Y目55kgでもほとんど同じ効果を得られると思いましたが、シュークリームの方が若干黄味が弱くモダンな印象なので、文芸書ではないこの本には合っていると思います。
◎本の内容について
今回は、以前読んでとても面白かった「急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則」の著者、マルコム・グラッドウェルの日本最新作。「全米で100万部以上売れた」というキャッチコピーがある上に、訳者は彼女についての本まで発売されてしまうほどの人気経済評論家・勝間和代氏なので、だいぶ話題になっていた(いる)本だと思います。
内容は「こうやって天才になろう!」というものではなく、ある人間が天才と呼ばれる者になるまでの過程や、ある飛行機が大事故を起こしてしまうまでの過程など、大きな結果に至るまでに実際まわりで何が起こったのかを丁寧に調べることにより、人間にとっていかに環境が大事なのかということを伝えるものです(と、自分は認識しています)。
装丁について具体的なことは上に色々描きましたが、全体としては弱くもなく、しかしうるさすぎず上品で、紙の地色や手描きのイラストで親しみを演出し、しかも子供っぽくもないという非常にバランスの良いデザインだと思いました。見返しと表紙の微妙な紙の差などは自分にはまったくないセンスなので、その点も面白かったです。
そしてさらに余談ですが、原書のデザインは全然違う事も面白い。売るための方法論は国によって全然違うことがよくわかります。

一番左が前作「急に売れ始めるにはワケがある」真ん中と右側が今回の「天才! 成功する人々の法則」。デザインも違えばタイトルも違う。その国の読者に合う形に変えるのは編集者の腕の見せ所です。
天才!  成功する人々の法則
天才! 成功する人々の法則
急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則 (SB文庫 ク 2-1)
急に売れ始めるにはワケがある
ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則